2025年11月2日日曜日

鈎とラインが小さすぎて結べない?ならフィンガーノット!川小物釣り

細糸、極小鈎の救世主、フィンガーノット

釣り糸をハリに結ぶ――それだけのことなのに、うまくいかない。
気づけば糸が滑り、鈎が手から零れ落ちていく。せっかく燃え上がったチャレンジが冷めきってしまうこともありますよね。

そんなときに覚えて欲しいのが「フィンガーノット」。

一見むずかしそうに聞こえますが、コツをつかめば驚くほどシンプル。ハサミさえあれば指先ひとつで、糸と糸がしっかり信頼関係を結ぶように繋がってくれます。




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薄暗い国道の橋の下、座りやすい石に腰を下ろす。
釣り具ケースから鈎とハリスを取り出し、何度も結んでみるが、どうにも納得がいかない。指先がもつれ、糸がヨレるたびにため息がこぼれる。

「あ゛ー! もうやめた!」

頭上をトラックが走り抜け、その音に紛れるように叫んだ瞬間、遠くからアオサギが飛んできた。ヒューッという風切り音と舞う羽根。やがて羽ばたきの中から一人の女性が現れ、軽やかに護岸へと降り立つ。
「釣り姉!?」

オレの声に、彼女は微笑んだ。



難しいようで意外と簡単? フィンガーノット


ハリス付き鈎のストックは多めに準備

釣り姉:「おやおや、ずいぶん荒れてるじゃないか、鯉太郎青年」

鯉太郎:「釣り姉!? いいところに来た!」

釣り姉:「アハハ、どうしたんだい?」

鯉太郎:「とにかくさ、ハリと糸、何度やってもうまくいかないんだ」

釣り姉:「どれどれ、見せてごらん」

鯉太郎:「三本外掛け結びをしてみたんだけど、どれも微妙なんだよな」

釣り姉:「ふむ、結び目の形は悪くないじゃないか」

鯉太郎:でもさ、ヨレがあるんだ。真っすぐにならないんだよ

釣り姉:「あぁ、それならこうやって指でしごいてみな。案外、真っすぐに戻るもんさ」

鯉太郎:「……ほんとだ、ちょっとマシになった。でも、なんか納得いかないなぁ」

釣り姉:「“とりあえずくっついている”結び方と、釣れるきれいな結び方は違うからね。何事も練習だよ」

鯉太郎:「練習? これでも半日は練習したんだよ?」

釣り姉:「あはは、それじゃあ、今日はすぐにできる特別に簡単な結びを教えてあげようじゃないか」

鯉太郎:「簡単? ヨレも出ないやつ?」

釣り姉:「もちろんさ」



フィンガーノットの結び方

釣り姉:「というわけで、今日教えるのは“フィンガーノット”という結び方さ」

鯉太郎:「フィンガーノット?」

釣り姉:「そう。タイイングツールを使わずに、細い糸や小さな鈎でも簡単に結べる方法さ。まずは鈎とハリスを用意しよう」


釣り姉:「次いで、左手の親指と人差し指で鈎元(ちもと)とラインを軽くつまむ」

鯉太郎:「こう?」

釣り姉:「そうだ!」


釣り姉:「そうしたら、右手で輪を作ってみて」

鯉太郎:「これくらい?」

釣り姉:「いいね。直径5~10センチくらいだ。それを左手の指で軽く押さえて、鈎の根元に固定する」

鯉太郎:「そういえば、端線の長さってどれくらいがいいの?」

釣り姉:「長すぎると巻き込み、短すぎると締めづらい。ラインが自重でしならない長さだね。具体的にはフロロ0.3号なら2~4センチくらいかな?」

鯉太郎:「なるほど」


釣り姉:「ここからは巻きつける作業だよ。引き続けて左手で鈎元と輪を押さえ、右手で輪を軽く引っ張りながら、鈎の軸に巻きつける


鯉太郎:「うわ、端線が絡まる!」

釣り姉:「鯉太郎、それは端線が長い証拠さ。重ならないように、テンションをかけながらゆっくり丁寧に6~7回巻きつけてごらん」


鯉太郎:「こんな感じ?」

釣り姉:「うん、その調子だね」


釣り姉:「そうしたら、ここから結ぶ作業になる。そのままテンションをかけながら、巻いた部分を左の指で固定して」

鯉太郎:「にしても、ずっと指ばっか使ってるな……」

釣り姉:「ハハハ、だから“フィンガーノット”なんだよ」

鯉太郎:「なるほどな」


釣り姉:「固定したら、左指はそのまま、右指は端線にテンションをかけるのを止めて、本線側をつまみ、軽く引っ張って"たるみ"を取ろう。これが残っているとヨレの原因になるからね」

鯉太郎:「はーい」


釣り姉:次は端線側。こっちも軽い力でやさしく引っ張るんだ。あ、そうそう、指を唾や水で濡らしておくとラインを痛めにくい」

鯉太郎:「へぇ、そんな小技もあるんだ」

釣り姉:「で、糸が止まったらいったん締めるのをやめるんだ。無理に引っ張ると傷むからね」

鯉太郎:「了解」


釣り姉:「さ、ここで左手を放してごらん」

鯉太郎:「うわ! 結び目できてる!」


釣り姉:「でもまだ仮止めだよ。鈎の軸を湿らせて、双方を半回転させるように捻りつつ、結び目を鈎元に向かってスライドさせるんだ

鯉太郎:「半回転?」

釣り姉:「そう、鈎元の外角にラインが乗るように。すると真っすぐになるだろう?」


鯉太郎:「よいしょっと! どれ? ほんとだ、鈎とハリスの角度が真っすぐだ! それにヨレがない!」

釣り姉:「そうでしょ? よし、最後は増し締めして、端線をカット。これで完成だ」


鯉太郎:「できた! オレでも結べた!」

釣り姉:「アハハ、だから言っただろ? 簡単だって」



フィンガーノットのメリット・デメリット

鯉太郎:「なあ釣り姉、このフィンガーノットって、なんでこんなに簡単なんだろう?」

釣り姉:それはね、一度もラインを輪に通していないからさ

鯉太郎:「え、通してないっけ?」

釣り姉:「そう。巻きつけて締めただけ。右手は操作、左手は固定。だから難しい動きがないんだよ」

鯉太郎:「あ! ほんとだ! それに口で引っ張るとか、そういうのもないし」

釣り姉:「その通り。だから慣れたら短時間で結べるようになる」

鯉太郎:「確かに、巻いて引っ張るだけだもんね?」

釣り姉:「それに、仕上がりを見てごらん。ヨレがほとんど残ってないだろ?」

鯉太郎:「うん、ピンと真っすぐ!」

釣り姉:フィンガーノットはね、巻いた部分も引っ張った部分も全部“端線側”になるんだ

鯉太郎:「つまり、ヨレの出たところは切り捨てちゃうってこと?」

釣り姉:「そういうこと。だからハリスに癖が残らないのさ」

鯉太郎:「へぇ……合理的だな。あ、でも、結構ライン捨てた気がする」

釣り姉:「鋭いね。最初に輪を作ったでしょ? その分の15~20センチは無駄になるかな

鯉太郎:「もったいなくない?」

釣り姉:「確かに。でもね、あの輪が大きいほど結ぶのが楽になるんだ」

鯉太郎:「ふーん、じゃあ、ちょっとの無駄は覚悟した方がいいんだね?」

釣り姉:「そういうこと。それだって、50メートルで千円くらいのフロロラインをハリスに使うなら、鈎代を含めて、バラで買って自分で結んだ方が安いんだ

鯉太郎:「たしかに。既製のハリス付き鈎って安いけど、いっぱい使うと高いものね」

釣り姉:「そうなんだ。それにもっと安いナイロンやエステルを使えば節約効果もさらに上がる。釣りのコスパを上げるには大切な業さ、練習は必須だけどね?」

鯉太郎:「それは、オレみたいな貧乏高校生にはぴったりってことか」

釣り姉:「アハハ、その通り。学生なら練習する時間もたっぷりだしね」

鯉太郎:「でもさ、簡単だけど強度は大丈夫なの?」

釣り姉:「魚に切られたことは一度もないよ。根掛かりで外すときに体重をかけてようやくだね」

鯉太郎:「そんなに強いのか!」

釣り姉:「0.2号~0.4号の細糸でも、相手は15センチの魚だろ? だから十分さ」

鯉太郎:「それって、もしかして、前話してた延べ竿のしなりも関係してる?」

釣り姉:「もちろん。柔らかい竿が衝撃を吸収してくれるからね。でも、慣れないうちは強く合わせすぎて切ることもある。必ず締めこみをして確認だよ」



結び方は一生もの

鯉太郎:「ふぅ……なんとか覚えたかも」

釣り姉:「手が覚えたらこっちのものさ。それじゃあ次に会うときまでに5分で結べるようにね?」

鯉太郎:「えぇ……宿題!?」

釣り姉:「ハハハ、釣りは全てが練習の積み重ねさ。鈎結びも、竿捌きも、合わせもね?」

鯉太郎:「……確かにそうかも」

釣り姉:「それに、自分で結んだ鈎で釣れた魚のほうが、うんと嬉しいもんだよ」

鯉太郎:「……そういうの、ちょっとわかる気がする」

釣り姉:「だろう? 一度身に着けてしまえば、一生ものさ」



まとめ

釣りをしていると、「ハリと糸をうまく結べない」「ヨレができて仕掛けがきれいにまとまらない」――そんな悩みを感じたことはありませんか?
そんなときにおすすめなのが「フィンガーノット」という結び方です。名前の通り、指先だけで結べるシンプルな方法で、初心者でも失敗しにくく、きれいに仕上がるのが特徴です。

フィンガーノットの最大の魅力は、「小さな鈎でも結びやすいこと」。
特別な道具を使わずに、指だけでラインを操作しながら、スムーズに結べます。しかも、ラインを輪に通す工程がないため、糸がヨレにくく、ハリスがまっすぐ仕上がります。小さな鈎や細いフロロラインを使う繊細な釣りでも、結び目が安定して強度が保たれるのです。

やり方も意外と簡単です。鈎元とラインを指で固定して、輪を作り、それを軸に沿って6~7回ほど巻き付けていきます。あとは、ラインを軽く湿らせてゆっくり締め込むだけ。見た目よりもシンプルで、慣れてくると数十秒で結べるようになります。

さらにうれしいのは、ヨレがほとんど残らないこと。結束時にねじれが生じても、最終的にカットされる部分(端線側)に集中するため、仕上がったハリス部分がきれいに保たれます。釣り糸の動きが自然になり、魚に違和感を与えにくくなるのも大きなメリットです。

デメリットとしては、少しだけラインのロスが出ること。おおよそ20cmほどのラインを切り捨てることになりますが、ハリス1本あたりのコストを考えればごくわずか。自分で結べるようになれば、既製品を買うよりもずっと経済的です。

フィンガーノットは、「簡単・きれい・ヨレにくい」の三拍子がそろった万能な結び方です。少し練習すれば、釣り場でのトラブルをぐっと減らせるでしょう。自宅で指を動かしながら感覚をつかんでみてください。きっと次の釣りが、今よりずっと楽しくなるはずです。



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