誰でも簡単フライフィッシング
5/1に書いたテンカラ毛バリ釣りの記事が、意外と読まれていたので、今回はその続編。
今回はオイカワ、カワムツのフライフィッシングについて、読み物を挟みつつ紹介していきたいと思います。
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久しぶりに夜明けの河原に出る。夏至間近の川は、いつの間にかウグイスの天国となっていた。
夜明けの川、高まる期待
寒かった今年の春、釣果も渋く桜も散ったというのに、河原は枯草にまみれ茶色に染まっていた。それが今やどうだろう、木々は青々とし、夜虫が鳴いている。高まる期待に胸を踊らせて竿に仕掛けにと釣り具を出していると、川上からピシャと魚が飛び出す音がした。とっさのことで振り向くと波紋がまだ残っており、これを雑草や石の位置関係とともに頭の中に叩き込む。フライフィッシングは虫の釣り、ライズは虫を食べている魚がいることを示している。つまり、釣れる魚がいることを示しているのだ。大慌てでガイドに通していく。出すラインは竿3本分。
空が赤く染まり始めるころ、竿を握りしめて上流へと歩き始める。ふと、足元にある石だと思っていた黒い塊が少し動いた。どうやら、カルガモが寝ていたようである。彼は抗議の声を上げながら飛び立っていった。 これではいけないと、ウェーダーの足音で魚を散らせないよう、細心の注意を払い静かにライズがあったポイントに近づく。そして、テンカラ釣りの要領で上流の8m先のライズのあった浅瀬を狙う。フローティングラインがピタリ張り付き、毛バリがふわっとした着水直後に水しぶきが上がった。
フライフィッシングのシーズンの一投目。びっくりして大きくロッドをあおると、一瞬魚の姿が見えて手元に振動がブルルと伝わってくる。無事にフッキングしたようだ。大慌てでラインを手繰り、魚を引き寄せると10cm前後のオスのオイカワがかかっている。ワタワタしながらランディングネットを取り出すのだが、手元が狂い水中に落としてしまう。逃げられないように右手で竿をしならせつつ、左手で網をすくい上げてなんとかキャッチ。フライフィッシングの半年ぶりの釣果となった。
しかし、魚たちの反応はこれで止まってしまった。自然界はそう甘くないようだ。トロ瀬を釣り上がりながら何度もキャストするも、先ほどのドタバタで釣り人がいることを察知されてしまったようだ。ならばと、今度は下流に足取りを向ける。
タヌキたちの朝と空のドラマ
ウェーダーを頼りながら川の中を進む。ふと、対岸のコンクリート護岸に呼ばれた気がして振り向くと、四足歩行の生き物が大小入り混じって4匹、走って逃げていった。どうやらタヌキのようだ。
都市部にありながら自然豊かなこの川を下ること5分、目当ての荒瀬が見えてきた。狙うはその手前、横に広がる瀬脇。まずはリールからラインを15m前後出す。竿を左右に揺らして5m程竿先から出したところで、軽くロールキャスト。そのままダブルフォールしつつ、フォルスキャストを挟んでシュート。フライは荒瀬を飛び越え、おおよそ13m先、60°斜め下流の対岸付近に着水する。そして、水面に張り付いたラインは荒瀬の流れに乗り、手元に残ったラインを引っ張り出しながら下流を目指す。やがて、すべてのラインが竿から出ると、今度は水の抵抗で自分の90°下流へと動き始める。スウィングというテクニックだ。このスウィングで魚がかかることもあるのだが、しかしあくまで、ここまでは序章に過ぎない。
スウィングが終わると、フライとラインは正面にある荒瀬を抜け、手前側の流れの緩い瀬脇へと入り始めた。ここからが勝負なのだと言い聞かせ、全神経をロッドに集中させる。そしておもむろに、左手でラインを引くストリッピング(リトリーブ)をすると……。
頭上で何かが猛スピードで地面へと向かっていく。鋭いくちばしに太い脚と爪、猛禽類のようだ。それを背後から追いかけるのはセグロセキレイ数羽。捕食者は迷うことなく草むらへと飛び込んでいく。どうやら狩りの瞬間に立ち会ってしまったようだ。
都市部の大自然に魅せられ、手を止めてあっけにとられていると、突然プルプルとした振動がロッドに伝わってきた! するりと竿をあおると、どうやら魚がかかったようだ。とは言え、まだ気が抜けない。この釣り方ではフッキングが甘くなりやすく、バラしやすいからだ。さりとてびっくり合わせも魚を逃す原因となるので、鋭くダブルフッキングを決めると、かかったのは小さなオスのオイカワ。PEやナイロンなどと比べ、はるかに太いフライラインでもこのサイズでもアタリが感じられるのだから、不思議なものだ。
再び、ロールキャストでピックアップしつつ、再び斜め60°対岸にキャストして、スウィングしてストリッピングする。時にフライをルアー釣りだと非難されることもあるこの釣り方だが、これはれっきとしたウェットフライの釣り方だ。そして、このようにして3度キャストをしたら1~2m下流へと進み、また同様に一連の動作をする。こうすれば、広範囲をくまなくカバーできるのだ。これはリールがついているフライフィッシングだけの特権なのだ。
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フライフィッシングのはじめ方
意外とお手頃!フライフィッシングの道具費用
と、いうわけで今年もオイカワ・カワムツ・ウグイがフライで釣れる季節となりました。
しかし、フライフィッシングは、始めるにはお金がかかりそう……というイメージがあるかもしれません。
でも意外と手軽なんです。たとえば国産のオイカワ用フライロッドは約四万円。しかし中国製ならAmazonで1万円ほど、アリエクスプレスならセールで七千円程度でライン付きのセットが手に入ります。リールも二千円くらいとお手頃。毛バリは既製品が充実していて、国内メーカーの毛バリでも3個入りで800円ほどで購入できます。ほかにバッキングラインやフライケースも揃えればOK。わたしはさらに#2WFのマルチライン(約2千円)を追加で購入してみましたが、それでもトータルで一万円前後。こんなに気軽に一式が揃うなら、フライフィッシングを始めてみるのもありではないでしょうか?
キャストは思ったより簡単!
でもフライフィッシングのキャストって難しそう…そんなふうに思っていませんか?
でも実はとてもシンプル。オイカワやカワムツなら7~8m前後ラインが飛べば十分釣りになります。まずはフォワードキャスト、バックキャスト、フォルスキャスト、シュートといった基本の動きを覚えてみましょう。
大丈夫、そもそもフライロッドはこの独特なキャスト動作に合わせて作られている竿なので、釣り場で1時間も練習すれば形になりますよ。細かい話はYouTubeなどにレクチャー動画(アメリカの動画に翻訳字幕を付けて視聴するのがおすすめです。)が多数上げられているのでそちらにおまかせするとして、ここではいくつかを紹介したいと思います。
まず、竿は手首で振るのではなく肘を前後にして振ること。ラインが直線的に動き、竿に重みが乗りやすく遠くまで飛ばしやすくなります。そして、振り始めはゆっくり、だんだん加速して、終わりはピタッと止めること。ティペット(ハリス)が絡まる現象のテイリングループが起きづらくなります。振り終わりはルアー釣りのような弾道任せの着水はNGだということ。ラインが落ちるまで竿先で水面にやさしく誘導し、フライが「ふわり、ポト」と落ちるのを演出しましょう。
以上ができるようになると、もっとフライフィッシングが快適になり釣果も上がり、楽しくなるはずです。
難しいことは後回し。まずは釣ってみよう!
フライフィッシングの情報を探すと、ややこしい理論や難しい技術の説明が多くて気後れするかもしれません。
でも心配はいりません。フライをラインに結んで流すだけで、ちゃんと魚は釣れるのです。これを「まぐれ」と言う人もいますが、実は「必然」と言えるべきものです。そもそも、オイカワやカワムツと毛バリの相性は抜群で、「流し毛バリ」という和式の簡単な釣法まであるほど。実地でオーバーヘッドキャストができるようになったら、早速ポイントを狙ってみましょう。特に6~10月は毛バリを流すだけで簡単に釣果が望めます。
この時、安価なもので良いのでウェーダーを用意するととても快適です。川の中から上流、下流、斜め上流や斜め下流に向けてキャストすれば、バックキャスト時に草木を避けやすく、気持ちのいい釣りができますよ。
まずはウェットフライで一匹ゲット!
もし、初めてオイカワのフライフィッシングをするなら、まずはウェットフライがおすすめです。
ウェットフライは一見深く沈みそうに見えますが、さにあらず。水面下数センチで漂う毛バリです。そのため、浅瀬では魚が勢いよく飛び出してくるので、簡単にアタリがわかります。また、フッキングが容易なのも優れている点です。実は魚は水面に張り付いた虫(ドライフライ)よりも、水の中に入り込んだ虫(ウェットフライ)のほうが捕食が上手だからなんです。
そしてなにより、フロータントを塗る手間がなく、水面付近を狙いテンポよく釣りを続けられるのが魅力。いちいち乾かす必要もなく、1つのフライで長時間釣ることも可能です。準備もシンプルで経済的。最初はフライが魚に食われているか不安になるかもしれませんが、釣り方次第で十分カバーできます。
このように、ウェットフライは最初の1匹が釣れるまでのハードルが比較的低い釣り方です。釣れるほどにフライへの信頼感が自然と高まり自信につながりますから、あっという間にフライフィッシングにはまること間違いなしです。続々と釣果が上がれば、次はキャストの精度を高めたり、ドライフライやルースニング、ユーロニンフィングなど新たな釣法にも挑戦したくなるはずです。
道具とウェットフライのテクニック
細めのロッドで繊細な釣りを楽しもう
渓流用のロッドは#3~#5が市場にあふれています。しかし、オイカワやカワムツを狙うなら#0~#2の細めのロッドが断然おすすめです。細いロッドほど釣り味が繊細に楽しめ、軽いラインなら魚に警戒されにくくなるからです。
さて、事実として外国産と国産ではロッドの硬さに差があります。魚のサイズが大きいからでです。そのため、同じ番手でも国産の方が外国産と比べてやわらかい傾向にあるようです。結果として同番手なら、国産の方がしなりや釣り味が優れている一方、やわらかいためキャストやフッキングが難しく、対して外国産はキャストやフッキングがしやすい傾向にあるものの釣り味に落ちる傾向があります。
上の写真は、それぞれアリエクスプレスで7000円前後で購入したMaxcatchのロッドです。現在は、こういった手ごろなロッドでも、フライフィッシングは簡単にスタートできる時代となっています。
さて、この安価な中国製のロッドは、アメリカやヨーロッパの市場を意識しているため、上の例にもれません。感度やキャストのしやすさ、フッキングの乗り方は十分です。しかし、若干竿が硬いように感じます。もちろん、良サイズのウグイやオイカワが釣れれば弓なりにしなりますから、釣り味がまったくないとうわけではありません。
シンプルなリーダー&ティペットで十分釣れる
よく細長いリーダーやティペットが必要だと言う人もいますが、それはあくまで真冬の厳しい状況で釣りをする上級者向けの話です。6~10月の最盛期なら、テンカラではハリスは0.8号のナイロンラインを50cm前後の長さでも十分に釣れますから、むやみに長くする必要はありません。むしろ長くしすぎるとライントラブルの原因になります。
実際、わたしは7.6ftの5Xリーダーのティペット部分がなくなったら、そこに0.8号のナイロンラインを80cmほどつけ、全長1ヒロ(150cm前後)で使っていますが、それでも問題なく釣れています。
それでも釣れないなら、道具よりも狙うポイントが間違っているのかもしれません。渓流魚と違って「釣れる魚」です。シンプルに考えて自然を楽しみましょう。
ウェットフライの流し方、スウィング&ストリッピング
スウィングは下流対岸にキャストしたラインを扇状に動かし、流れに横切らせたときにフライを水面に浮上させ、魚の好奇心を煽るテクニックです。一方、ストリッピングはラインを手で引いてリトリーブし、魚にアピールするテクニックです。どちらもフライを水面下数センチで動かすため、ウェットフライでよく使われる技術です。これらは、フッキングは向こう合わせになることが多く、アタリがあれば自然と竿にプルプルと振動が伝わってきます。あとはそのままリトリーブしてくればOKです。どちらも、とにかく簡単なのが大きな魅力です。
しかし、簡単だから釣れないというわけではありません。先述のように瀬を利用すれば泡のカーテンでラインの着水が感づかれにくくなるように、流れと魚がいる場所の関係をうまく利用すれば、魚を警戒させずに連続して釣りあげることも可能です。
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| もちろんドライフライでも釣れます! |
テンカラ的釣法で楽しむ
テンカラ的釣法は、オーバーヘッドでふわっとキャストし、3秒経ったらすぐにピックアップ&レイダウンする方法です。
テンカラでは、魚は着水前より毛バリが見えており、その着水音とマテリアルが生み出す気泡で反射的に食いついてくるため、短時間で十分だと考えているからです。
これを1ポイントにつき、3~6回繰り返し反応を見ていきます。パシャと魚が飛び出してきたら、優良なポイントです。魚が釣れるまで何度となく繰り返してみてください。何度か繰り返し反応がなくなったら、魚がスレたと考えてポイントを移動しましょう。
実際、フライロッドでもこの釣法をしてよく釣れます。ストリッピングで瀬や淵が反応しなくなったら、草影や障害物の小場所を狙うと、魚が勢いよく飛び出した経験が幾度となくあります。
さて、ここで、「フライが沈んでいるのに、どこを見ればいいのか!?」と声を上げる人もいるでしょう。答えは至極簡単で、キャストした先に頭の中で1mの円を描いて観察してみてください。バシャッと出たり、水中がギラリと光ったり。もちろん、気づかないうちにアタックしていることもあります。そのため、3秒という短時間でフライを上げるのが重要なポイントとなります。慣れないうちは勝手に釣れていることもよくあることです。
というわけで、今回はここまで。長文を読んでいただきありがとうございました。






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