オイカワ・カワムツ・ウグイ釣りのための竿選び
釣りを始めたばかりの頃、「どの竿を選べばいいの?」と迷った経験はありませんか?
延べ竿は要注意。渓流竿と清流竿の違いが分からなければ、長さや硬さ、値段の違いだけでも、どれも同じに見え、悩んでしまいますよね。実は、竿選びのコツを押さえるだけで、釣りの楽しさもぐっと広がるんです。この記事では、初心者でもわかりやすく、快適に魚と遊べる竿の選び方を丁寧に解説していきます。
**********************************
今日もいつもの川でオイカワを狙う鯉太郎。
だが、今使っている竿には不満がある。
折しも南の空からアオサギがやってきた。
となれば、着地すると羽根を飛び散らせて人の姿となる、この人ならざる釣りバカに質問をぶつけるしかない。
オイカワ釣るなら柔らかくて長い竿
釣りに慣れると必ず生まれる、今の竿への不満
鯉太郎:「釣り姉! 実は相談があるんだ!」
釣り姉:「ん? 相談ってなんだい、鯉太郎」
鯉太郎:「実は、今使っている3.6mの竿なんだけど、これだとポイントを探すのが結構大変なんだ」
釣り姉:「はーん、さてはもっと長い竿が欲しいってことかい?」
鯉太郎:「そうなんだけどさ、今使ってるのグラスで硬調の小継渓流竿じゃない? なんか硬すぎる気がするんだよね」
釣り姉:「どうしてそう感じるんだい?」
鯉太郎:「それがさ、小さい魚だと硬い竿がしならないから、すぐにスレ針が外れるし、逆に竿をしならせてテンションをかけると、あっという間に水面から上がっちゃってさ……つまらないんだ」
釣り姉:「なるほど。つまり、長さのほかに柔らかさについて聞いているんだね?」
鯉太郎:「うん、さすが釣り姉、話が早いな」
釣り姉:「アハハッ! 釣りの相談なら何でも聞くよ。とにかく今の竿に不満が出てきたってわけかい?」
鯉太郎:「そうなんだ。最初は使いやすかったけどな……最近どうにも、オレの釣りとこの川と、竿の相性が合わなくって。どうにもしんどくんだよ」
釣り姉:「あー、それは経験をいっぱい積んだ証拠かもなしれないな。じゃあ順に話そうか。まずは“長さ”からだ」
![]() |
| ・似たような穂先でも、竿尻の太さは違う |
長さは3.6mから5.4mまで
釣り姉:「まず長さについてだけど、川の大きさにもよるけど、3.6m~5.4mぐらいがいいだろうね」
鯉太郎:「3.6mはもう持ってるから、じゃあ4.5mか5.4mだなぁ」
釣り姉:「そういうことになるな。ところで、長い竿は振り込める距離が増える以外のメリットもあるんだけど、知っているかい?」
鯉太郎:「うーん、なんだろう。とりあえず流せる距離も増えるよね?」
釣り姉:「もちろん。3.6mの場合は、竿の長さと糸の長さを合わせて最長7.2m。これを5.4mにしたら10.8m、その差は3.6mだね。もし流せる面積で考えるなら、円の面積同士の比較になるので、半径の2乗分違うことになる」
鯉太郎:「えーっと半円の面積だから、5.4×5.4×π÷2で29.16π/2と、3.6×3.6×π÷2だから12.96π/2。単位が揃ってるからそのまま比較すると……」
釣り姉:「さて、いくつになるでしょうか? お!地面にひっ算かい? がんばるねぇ」
鯉太郎:「うーんっと、わかった! 2.25倍だよ! 今まで計算したことなかったけど、竿をちょっと長くするだけで、そんなに変わるのかぁ。大きいなぁ」
釣り姉:「そうでしょう? でも、メリットはそればかりじゃないんだよ。他は分かるかな?」
鯉太郎:「え? ……なんだろう」
釣り姉:「釣り味さ。てこの原理ってわかるかい?」
鯉太郎:「小学生じゃないんだから、それぐらい分かるさ!」
釣り姉:「本当かい? アッハハ! ともかく、てこの原理を延べ竿に当てはめると、ラインを魚が引っ張るから穂先が力点、親指と人差し指の先端付近のグリップが支点、実際に力がかかる手首のあたりが作用点になる」
鯉太郎:「うーん? ……つまり、竿が長くなればなるほど魚の力が増幅されるってことかな?」
釣り姉:「ご名答! 小さなオイカワでも強い引きを体感できるってわけさ!」
鯉太郎:「オレ、てっきり長ければ長いほど釣りやすいって思ってたけど、違うんだね」
釣り姉:「そうさ。長いほど探りやすいけど、釣れた時の引っ張る力も強くなる。逆に言えば、竿を長くすれば小さな魚でも強い引き味を楽しめるってわけ」
鯉太郎:「じゃあ、釣り竿って人間にとってハンデってこと?」
釣り姉:「語弊を恐れずに言えば、そういうことかもね」
鯉太郎:「でも、釣りを楽しめるのなら……それでいいのかも」
釣り姉:「あはは。釣り人にとって釣り味も大切だからね。もっとも、この釣り味の話は竿の感度やしなりを抜きにしてるから、単純に力だけの話だけどね」
![]() |
| ・矢印はあくまでもイメージ |
細くて柔らかい竿がしてくれること
鯉太郎:「ところで、竿はどんな調子がいいのかな。同じ長さを使う渓流釣りは硬調がおすすめだったから、このグラス竿を買うときは硬調の渓流竿にしたけど……」
釣り姉:「それが硬すぎるって、さっき言ってたんだよな?」
鯉太郎:「そうなんだよ。若魚だと軽くて竿がしならないから、すぐにスレ針が抜けるし、逆に竿をしならせると魚はすっぽ抜けるように上がってくるから、ファイトにならないんだよね」
釣り姉:「察している通り、この川の小物釣りはなるべく柔らかい"柔調"のほうがいいんだよ。だから、渓流竿ではなく清流竿(ハエ竿・ハヤ竿)を使うんだ」
鯉太郎:「柔らかいほうがいいのはなんとなくわかるんだけど、でも硬いほうが感度がいいって聞いたよ? ある程度シャキッと硬いほうがいいんじゃないかな?」
釣り姉:「まぁ、ネットのレビューとかを見ると、渓流竿と清流竿の区別がつかなくて、清流竿に対して“ダルい”の“ペナペナ”で“持ち重りする”とか、見当違いなことを書いている人もいるけど、そもそも双方は似て非なる竿なのさ」
鯉太郎:「じゃあ、ダルダルで感度は壊滅的でも大丈夫なの?」
釣り姉:「ラインを流してアタリを取る渓流のミャク釣りと違って、清流の小物釣りはウキを流してアタリを取る釣りなんだ。だから、竿よりはウキの感度が大切なんだよ」
鯉太郎:「なるほど、ウキかぁ。感度はそこまで気にしなくてもいいんだ」
釣り姉:「それに、やっぱり柔らかいほうが竿がよくしなるから、ラインにテンションがかかりやすくなる。すると、魚の口に刺さったハリが常に引っ張られているから、バレづらくなるんだ」
鯉太郎:「じゃあ、今使っているハエスレ針は、そういった竿を使うことが前提なんだね?」
釣り姉:「そういうことになる。でも、柔らかさの利点はそればかりじゃないんだよ。大きくしなれば人間の力を吸収するし、重さで弧を描けば魚もなかなか上がってこなくなる」
鯉太郎:「……もしかして、長さの話といい、柔らかさの話といい、人間の強すぎる力を抑えるためでもあるの?」
釣り姉:「お! よく気が付いたな! そうなんだよ。小さな魚でも引きを最大限に感じ取るために、長くて柔らかい竿を使うって考え方もできるんだ。でも、力を抑えるのが利点になるのは、ほかにもあるんだよ?」
鯉太郎:「?」
釣り姉:「今、何号のハリスを使ってる?」
鯉太郎:「えーっと、0.3号のフロロだよ。細いほうが水に馴染みやすいって聞いたから……」
釣り姉:「そういった繊細なラインに急に強い力を加えたら、どうなる?」
鯉太郎:「え? そりゃあピッて切れるに決まってるよ。だって、根掛かりしてどうしても取れないとき、竿から仕掛けを外してグッと力を入れて、地面から切るように抜いているからね」
釣り姉:「そうだよね。でも、0.3号でもオイカワとかウグイの大物でもラインブレイクしないだろう?」
鯉太郎:「たしかに……そうかも」
釣り姉:「つまり、延べ竿には力の加わり加減を緩和して、細いラインを守る役割もあるのさ」
鯉太郎:「それって、リールのドラグと同じだね。ふーん、やっぱり細いラインのほうが釣れやすいし、それを使うためには柔らかい竿がいいなのかぁ……」
釣り姉:「まぁ、釣れるか釣れないかの話は置いといて、繰り返すが同じ淡水自然河川の延べ竿でも、渓流竿と清流竿では対象魚も違うし、釣り方も違う。長さは同じでも、その調子はまるっきり違うのさ」
鯉太郎:「じゃあ、今度買うときは、長い清流竿がいいんだね?」
釣り姉:「そのほうがバレないし、釣り味もいいし、ラインも切れづらくなるってことさ」
安い竿、高い竿
鯉太郎:「そういえば……、同じ目的の竿でも高いのと安いのがあるけど、どうしてなの?」
釣り姉:「一昔前は、グラスかカーボンかで値段帯がはっきり分かれてたんだけどね。最近はほとんどカーボン製ばかりで、ぱっと見じゃ違いが分かりづらい。でも、見えない部分が大きく違うのさ」
鯉太郎:「ということは、やっぱり高いほうがいいの?」
釣り姉:「いや、そうとも限らない。このオイカワ・カワムツ・ウグイの清流釣りなら、釣果はウキとオモリ次第。だから、竿の値段で釣れる数はほとんど変わらないはずさ」
鯉太郎:「えぇ……でも、値段が2倍も違うのに釣れる数が同じって、それはちょっと……」
釣り姉:「まぁまぁ、落ち着いて。それ以外の部分に“付加価値”がついてるのさ。 『ブランド料ばかりだ』なんて言う人もいるけど、実際はそうでもないんだよ」
鯉太郎:「じゃあ、どんな付加価値があるの?」
釣り姉:「大きく分けて3つ。感度、軽さ、そして使い勝手さ」
鯉太郎:「あれ? 感度? でも清流釣りはウキでアタリを取るんじゃなかったっけ?」
釣り姉:「そう思うよな? でも、魚が掛かったあと、今どっちに泳いでるかとか、暴れてるかとか――そういう動きを“竿越し”に感じ取るのも感度なんだ」
鯉太郎:「なるほど。オレの竿、魚が掛かると“石を引いてる”みたいにしか感じないけど、やっぱ違うのかなぁ?」
釣り姉:「もちろんだとも。いい竿なら、ブルブルッて泳ぐ振動が手元に伝わってくる。 それがたまらないって人も多いんだよ」
鯉太郎:「ふーん……。それはちょっと楽しみかも」
釣り姉:「まぁ、こればっかりは実際にそういう竿に出会わないと分からないよな」
鯉太郎:「うーん……」
釣り姉:「で、感覚以外で分かりやすいのは“軽さ”と“使い勝手”さ」
鯉太郎:「軽さと使い勝手? 何がそんなに違うの?」
釣り姉:「じゃあ、ちょっとあたしの竿を持ってみな」
鯉太郎:「どれどれ……ぬぬっ、こっちのほうが重い気がする! さすが5.4m!」
釣り姉:「そう思うだろ? でも実はこの竿、100g未満。 青年のグラス竿は200gあるから、倍も軽いのさ」
鯉太郎:「えぇ!?」
釣り姉:「さっき言った“てこの原理”を思い出してみな。竿を斜めに構えるだけで、重力方向に力がかかる。だから、長くて柔らかい竿ほど“重く感じる”んだ」
鯉太郎:「ふむふむ……つまり軽さはかなり大事ってことだね?」
釣り姉:「その通り。もし鯉太郎の竿のシリーズで5.4mを買ったら、たぶん400g近い。 あたしの竿の4倍の重さを振り回すことになるんだ」
鯉太郎:「えぇ!? そんな竿、1時間も振ってたら手首が壊れそう!」
釣り姉:「だろ?」
鯉太郎:「うーん、なるほどねぇ……。じゃあ“使い勝手”っていうのは?」
釣り姉:「簡単に言えば、トラブルの少なさかな。 同じ5.4mの竿でも、高い竿のほうが穂先の絡まりが少ない。 安いほうには“回転トップ”がついてたのに、だよ?」
鯉太郎:「そんなことあるの!?」
釣り姉:「あるんだよ。おそらく、ノウハウの蓄積とか、試行錯誤の時間が価格に反映されてるんだろうね」
あなたはコレクターではなくて釣り人
釣り姉:「とまぁ、これは竿に糸しかつけない単純な延べ竿の話さ。ガイドが付いてリールを取り付ける竿になったら、もっと難しくなる」
鯉太郎:「うーん……そんなのを見極めながら買うのは難しいなぁ」
釣り姉:「だから、最初のうちはあえて"延べ竿"という広い目線で見ないで、専用竿の中から、値段帯で選ぶのが無難かもな」
鯉太郎:「専用かぁ。つまり清流竿ってことだよね?」
釣り姉:「それがお勧めさ。とにもかくにもだ?」
鯉太郎:「はい?」
釣り姉:「道具に使うお金より、釣り場に向かうお金の方が大切さ。コレクターじゃないんだからね。お金は道具より釣行回数に向けるべきだ、釣り人ならね。そうすれば自然と釣りも上達して、数も釣れるようになる」
鯉太郎:「はーーい」
まとめ
オイカワ、カワムツ、ウグイの釣りを楽しむなら、まず大切なのは竿選びです。
川の大きさや釣る魚のサイズに応じて、竿の長さは3.6mから5.4m程度が目安です。長い竿は振り込める距離が伸びるだけでなく、魚の引きも手元に伝わりやすく、強い引き味を楽しめます。一方で短めの竿は取り回しやすく、初心者でも扱いやすいのが特徴です。
次に注目したいのは竿の硬さ。小物釣りなら、硬すぎる竿は魚が小さいとラインにテンションが掛かりづらくバレの原因となったり、すぐに水面に上がってしまい引き味を楽しめないこともあります。
逆に柔らかい竿は、魚の力を適度に吸収しつつ、大きくたわみながらハリをしっかりと保持し、最後までしっかり引き寄せててくれます。釣り味を楽しみたいなら、長さだけでなく柔らかさも意識するとよいでしょう。
さらに竿の値段についても触れておきます。高価な竿=釣果が上がる、というわけではありません。
清流釣りのような小物釣りでは、釣果はウキやオモリの選び方で決まることが多いのです。ただし、高い竿には感度や軽さ、使い勝手など、体験的なメリットがあります。軽くて扱いやすい竿は長時間の釣行でも疲れにくく、穂先の絡まりも少なくなるため、快適に釣りを楽しむことができます。
最初のうちは専用竿の中から、値段帯で選ぶのが無難です。
しかし、何より大切なのは、竿よりも釣り場に向かう回数にお金をかけること。釣行回数を重ねることで自然と上達し、魚もたくさん釣れるようになります。竿選びは迷うかもしれませんが、基本を押さえれば自分にぴったりの一本に出会えるはずです。



0 件のコメント:
コメントを投稿